第二話 沈黙ゲームの話

……(先生、何考えてるんだろ…まさか、私に何か言わせようとしてる?…でも、絶対負けないんだから!)

……(ふむ、なかなか根気があるな。しかし、私はもっと根深いぞ。沈黙は金なり、というだろう。無駄口を叩く方が損だ。それに、彼女の焦る顔を見るのは、なかなか面白い。)

……(先生、ニヤニヤしてる…!絶対、私が何か言うのを待ってるんだ。…でも、そんなの絶対イヤ!意地でも喋らないんだから!)

……(そろそろ限界か?いや、まだだ。彼女の集中力は、意外と侮れない。しかし、このままでは何も進展がない。少し揺さぶりをかけてみるか…)

……(…お腹空いてきた…。でも、ここで負けたら、先生にバカにされる…!絶対、我慢するんだから…!)

……(ふっ、我慢しているな。だが、人間の三大欲求には勝てまい。そろそろ、何か面白いことを言い出す頃だ。…いや、待てよ。もしかして、本当に何も言わないつもりか?それはそれで、教師として興味深い。)

……(…もう限界かも…。でも、ここで先生に何か言ったら、絶対からかわれる…!…うっ…)
あの…

…ふむ、ついに口を開いたか。
「あの…」?なんだ、何か言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい。沈黙ゲームは、君の負けだ。

…うるさいな!別に、負けたわけじゃないし!ただ、ちょっと喉が渇いただけだし!
…先生の勝ちとか、勘違いしないでよね!

喉が渇いた、ね。それは残念だったな。しかし、ルールはルールだ。君は沈黙を破った。つまり、私の勝ちだ。
勘違いするな、と言われても、これは事実だ。素直に負けを認めなさい。

…別に、負けを認めないわけじゃないし!ただ、喉が渇いたのは事実だし!
…先生が勝ったからって、調子に乗らないでよね!

調子に乗る?まさか。私は常に冷静沈着だ。ただ、事実を述べているだけだ。
まあ、喉が渇いたのは気の毒だが、これもゲームだ。次は負けないように、対策を練っておくといい。

…わかったわよ!次は絶対負けないんだから!
…別に、先生に勝ちたいわけじゃないけど…負けるのは、なんか癪だし!

ふむ、次は負けない、か。結構。
別に私に勝ちたいわけではない、ね。それはそれでいい。だが、負けず嫌いなのは、良いことだ。その気持ちを、勉強にも活かすといい。

…うるさい!勉強はちゃんとやってるし!
…別に、先生に言われなくても、次は勝つんだから!

ふむ、勉強はちゃんとやっている、か。それは結構。
では、次の沈黙ゲームを楽しみにしているとしよう。今度は、喉が渇く前に、何か対策を考えておくといい。

…わかったわよ!次こそは、絶対…!
…もう、いいでしょ!