第一話 数学のテスト100点の話

ほう、数学のテストで100点、ね。珍しいこともあるもんだ。いつもは計算ミスだの、公式を間違えるだの、くだらないミスで点数を落としてるくせに。
まあ、初めてにしては上出来じゃないか。何か特別な勉強でもしたのか?それとも、たまたまヤマが当たっただけか?

別に、特別なことなんてしてないし。たまたまとか、ヤマとか…失礼すぎでしょ!ちゃんと、ちゃんと勉強したんだから!
…別に、先生のために頑張ったわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!

ふむ、ちゃんと勉強した、ね。まあ、その結果が100点なら、素直に褒めてやってもいいか。努力は認めよう。
…別に、私のために頑張ったわけじゃない、か。それは残念だ。少しは期待してたんだがね。まあ、君の成績が上がるのは良いことだ。この調子で次も頼むぞ。

別に、先生に褒められたくて勉強したわけじゃないし!期待とか、勝手にしないでよね!
…でも、まあ、その、努力は認めるって…ちょっとだけ、嬉しくないこともない、かな。
次も、別に先生のためじゃないけど、頑張るし!

ほう、ちょっとだけ嬉しくないこともない、ね。素直じゃないな、君は。まあ、いい。その「ちょっとだけ」が、次へのモチベーションになるなら結構なことだ。
別に私のために頑張る必要はない。君自身の力になるんだからな。だが、結果が出れば、私もそれなりに評価する。それが教師というものだ。
次も期待しているぞ。今度は計算ミスなんてしないようにな。

うるさいな!計算ミスなんて、もうしないし!
…別に、先生に評価されたいとか、そういうんじゃないんだから!ただ、自分が納得できる点数を取りたいだけだし!
でも、まあ…先生が期待してるなら、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、頑張ってあげてもいいかな。

「ほんのちょっとだけ」ね。まあ、その「ほんのちょっと」で100点が取れるなら、大したものだ。君のポテンシャルはそんなものじゃないだろう?
自分が納得できる点数、か。結構じゃないか。他人の評価なんて気にする必要はない。自分の目標に向かって努力する。それが一番だ。
…まあ、私が期待していることが、君の背中を少しでも押せるなら、それはそれで教師冥利に尽きるというものだ。
次も楽しみにしているぞ。今度は「ほんのちょっと」じゃなく、全力で来い。

な、なに?ポテンシャルとか、全力とか…急にハードル上げないでよ!
別に、先生のために頑張るわけじゃないって言ってるでしょ!自分のため!自分のためなんだから!
…でも、まあ、先生がそこまで言うなら…ちょっとだけ、本気出してみてもいいかな。次も100点、取ってやってもいいんだからね!

ほう、本気を出してみてもいい、と。そして次も100点、ね。口だけは達者だな。まあ、その意気やよし、といったところか。
自分のため、結構じゃないか。それで結果が出せるなら、何も言うことはない。ただ、その「ちょっとだけ」の本気が、どれほどのものか、見せてもらうとしよう。
期待しているぞ。今度こそ、言い訳無しの満点を見せてみろ。

なっ…!言い訳なんてしないし!ちゃんと、ちゃんと満点取ってやるんだから!
…別に、先生に言われたからじゃないんだからね!私が、私が取りたいから取るんだから!
…でも、まあ、先生がそんなに期待してるなら…ちょっとだけ、頑張っちゃおうかな。

「ちょっとだけ、頑張っちゃおうかな」か。その言葉、覚えておくぞ。
私が期待しているからじゃない、か。結構。だが、結果は必ず見せてもらう。教師として、生徒の成長を見守るのは当然の義務だからな。
では、次のテストを楽しみに待っているとしよう。今度こそ、完璧な満点を見せてくれ。

も、もう!わかったわよ!絶対満点取ってやるんだから!
…別に、先生のために頑張るわけじゃないけど…先生が期待してるなら、ちょっとだけ、その期待に応えてあげてもいいかな…って、思ってるだけだし!
じゃあ、またね!